• 担当T

統計の話

新型コロナウイルスによる医療崩壊を防ぐには、8割の接触削減が必要だ、といわれています。どのような数学的根拠によってそのように言われているのでしょうか。いい機会ですので、一度整理しておきたいと思います。


前提1 新型コロナウイルス感染者1人は、以前のような対人接触機会が維持された場合、  平均して周囲の2.5人に感染を広げる

前提2 新型コロナウイルスに感染してから、平均10日間他人にうつす力を維持する

前提3 ウイルスの感染拡大は、ウイルスキャリアの人対人の接触機会に比例する

前提4 感染者が回復するまで、2週間かかる


上記の前提条件の下、現在の逼迫(ひっぱく)する医療リソースを崩壊から守るためには何が必要なのかを考えてみましょう。


まず、現在の患者を減らしていく必要があります。


理由 入院可能な病床数やECMO・人工呼吸器などの医療機器にある程度の余裕がなければ新規患者を受け入れられなくなってしまいます。また、現状のギリギリの医療従事者の負荷も軽減しなければ、持続的な医療提供体制を維持できません。


上記前提1と2を利用すれば、今まで通りの生活スタイルを維持するとすれば、新規感染者数は10日間で2.5倍、20日間で2.5の二乗、すなわち6.25倍、30日間で2.5の三乗、すなわち15.625倍となっていくことになります。あっという間に医療崩壊が起こることになります。


一方、患者一人が平均で1名にうつすとすれば、新規感染者数は元の患者数の1倍、1倍となってずっと横ばいとなるわけですから、現在の医療体制が継続することになります。現在ギリギリのところでなんとかやりくりされている医療従事者の負荷が継続することになり、間もなく疲弊・破綻を来すこととなるでしょう。


では、患者一人がうつす平均の人数が1を下回るとどうなるでしょうか。例えばこの数値が0.5人になったとすると、新規感染者の数は10日間で0.5倍、20日間で0.25倍、30日間で0.125倍と減少していくことがわかります。前提4から、2週間ごとに患者は回復していくわけですから、治療が必要な患者数はどんどん減少していくことになります。医療リソースには多少の余裕が生じ、医療従事者の負荷も軽減されていくことになるでしょう。この状態を、状況①と呼ぶことにします。


つまり、患者一人がうつす人数(以下これをxと書くことにします)をいかにして減らすかが重要になるのです。ではどのようにすればこの数を減らすことができるのか。ここで重要になるのが前提3です。接触機会を半分、つまり50%にすると、x=2.5÷2=1.25となり、まだ1を上回ります。6割削減すると、残りの接触機会は40%つまり0.4倍になるわけですから、x=2.5×0.4=1となり、これでもまだ足りません。


では8割削減するとどうなるでしょうか? 接触機会は20%つまり0.2倍となりますので、x=2.5×0.2=0.5となり、状況①を達成することができます。この状態をしばらく維持することよって、患者数を減少させていくことができます。国民全体の痛みを伴う忍耐が必要になりますが、辛抱強く自粛を続けることによって、医療リソースに余裕も持たせるだけの患者数にまで減らすことができるでしょう。


このように患者数が減らせることができれば、元の生活に戻ることができるのか、といえば、そう簡単にはいきません。なぜなら、元に戻せばまた10日間おきに2.5倍、2.5倍と新規感染者数が増加していくことになり、元に戻ってしますのです。では、一定期間の辛抱の後はどのような対策が必要になるのでしょうか。


十分に下がった新規感染者数を維持できればいいわけですから、接触機会を6割削減すれば、x=1を作り出すことができるわけです。せっかく苦労して作り出した状態を壊さないためには6割削減、これは必須条件となります。


したがって、緊急事態宣言がひとまず終わったとしても、治療薬やワクチンが開発完了→普及するまでの間は人的接触6割削減が求められ続けることになると思います。今後1年程度はこの状況が続くのでしょう。


我々はお上(国や県)が「自粛しろ、8割削減だ」と言っているからそれを守っている、という消極的な理解から脱却し、科学的・数学的根拠に基づく正しい理解に到達するべきです。何を目的とし、どのようなゴールを目指すべきなのか。その理解こそが、現状のストレス環境を能動的に受け止め、自分のための自粛であることを理解し、ストレスを軽減する力となるのです。


自分自身を、我々の社会を壊さないために持続していかなければならないことがあるのです。



23回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

学びなおしコースの新設

定年退職後の愉しみとして、昔勉強できなかったことを学び直す、という方が増えてきております。學至会ではこういった方々を対象とした学びなおしコースを開設いたしました。60歳以上のシルバー特典として、入会費の割引なども実施しております。https://www.gakushi-kai.com/recurrent

短期集中連載算数/数学/理科 ミスを防ぐノウハウ

ミスには様々な原因があります。どのようにしてミスを減らしていくことが出来るのか、學至会で実践している指導の一例をご紹介いたします。 ・字が小さい 老眼の始まった我々講師陣にはなかなか厳しいサイズの文字を書く生徒がいます(特に女子に多く見受けられます)。見間違いの温床となるばかりでなくごちゃついた印象のノートは復習意欲を削ぐ原因ともなります。 これで解決→ とにかく「字が小さい、見えない、おじいさん